シナリオ作者:しろぐみ 背景素材:ぱくたそ(https://www.pakutaso.com/)

2017.09.09:PL限定で公開
2019.07.30:テキスト修正
2019.09.23:テキスト修正
2020.04.11:公開用に修正

本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」

シナリオについて

クトゥルフ神話TRPG(第6版)に対応したRP重視のオリジナルシナリオです。
CoCらしい『狂気』『宇宙的恐怖』を求める方にはあまりお勧め出来ない内容になっています。

PL向けシナリオ概要

傾向

RP重視
舞台 :現代日本 季節指定無し 
人数 :ソロ推奨
時間 :短編シナリオ
    テキスト進行で5~8時間
探索者:職業、経歴、年齢に制限無し

技能

推奨:図書館、目星、聞き耳
推奨技能が無くても生還は出来ます

導入

ある日、仲の良い人(NPC)と一緒に過ごす場面から始まります

目次

シナリオ背景

あらすじ

友人NPCと穏やかな日常を過ごす探索者。明日も会おう、と約束したその夜、悪夢を見る。
その悪夢は探索者が忘れていた現実で既に起きていた事だった。

友人NPCは1ヶ月前、不幸な事故に遭い大怪我を負っていた。治療を受け一命をとりとめたものの、昏睡状態に陥ってしまった。 偶然か必然か、探索者も後を追うようにシナリオ開始の1日前に事故に遭い、意識を失う。

探索者と友人NPCの意識は現実の世界に近いようで全く異なる、奇妙な場所に迷い込んでいた。

探索者は事故のショックで意識が朦朧としていた。
そこで自分のよく知る友人NPCに出会ったことで、この世界が現実だと認識するようになる。
この時点で別世界に永住するつもりだった友人NPCは探索者の来訪に驚きつつ、喜んで迎え入れた。

しかし導入で、病室で探索者に呼びかける家族や友人の声(導入の聞き耳結果。友人NPCにも聞こえていた)を聞いて、
「この人は生きるべきだ」と考え、元の世界に返す計画を思いつく。
親しくなった(または昔仲良くしてた人・遠い親戚)のNPC1・2に元の世界に帰る扉があるホテルまで誘導や案内をお願いして
自分は日記を書いたり、新聞紙を抜き取ったりして、少しずつ、確実に、探索者が自分の力で記憶を戻すよう細工をした。

補足

探索者は最初幻覚を見た状態。
(死の淵を彷徨っており、生きてるか死んでるか分からない。意識が曖昧で、夢を見てるような状態)
「夢の終わりであなたを待つ」という言葉を目にしたのを切っ掛けに、徐々に意識が覚醒していく。
情報を集め、ホテルに近づく事で記憶を取り戻し、正気に戻っていく。

異世界について

死に向かう人と死者がいる世界。
ここが現実でないと分かっていても、現実世界と同じように生きることを望めば、生前とほぼ変わらない生活が出来る。
やろうと思えば何でもできる世界。
(『ドリームランド』が近い世界観かもしれません。KPをする際は自由に設定を生やしたりぼかしたりしてください)

KP向け補足

シナリオ本文について

KPが回しやすいように自由に改変してください。
シナリオに記載されている描写例はコピペ・書き換え可能です。
描写例の季節は春になっています。

探索者について

継続・新規問わずプレイ出来ますが、
探索者と仲の良い友人NPCが生えるのと、シナリオの都合上友人NPCと探索者が大きな怪我を負う事が確定しているので
PL・KPの傾向次第では新規PCで参加するように伝えた方が良いかもしれません。

キャラクターシートに
・どんな家に住んでるか、普段どう過ごしてるか
・家族構成や交友関係
を簡単に記入してもらうとシナリオ描写がスムーズに出来ると思います。

NPCについて

登場するNPCは3人。
下記のNPC詳細を参考にして自由に設定してください。

・友人NPC 
 シナリオ冒頭とラストのみ登場。
 探索者から積極的に友人の行方を捜して欲しいので、仲が良い設定にする。

・NPC1
 探索中同行するNPC。
 世界観説明と誘導役。必要あれば探索者が技能を失敗した時等の補助。

・NPC2
 扉から出られるのは1人だけではないことを教える役。
 END4を入れる場合必要なNPC。KPが必要無いと感じたら登場させなくても良い。

友人NPC

・PLに伝える設定
 名前、年齢、探索者との関係。
 子供の頃から叶えたい夢があり、実現を目指してずっと努力をしている。
 近々、今住んでいる場所を離れる事になっている。(留学、新生活等。理由は自由に決める)

・秘匿設定
 友人は1月前に事故に遭っていた。
 順調に夢の実現に近づいている所で突然道を絶たれてしまった事で、ひどくショックを受ける。
 自分が完全に死んでない事、目覚めようと思えば目覚められる事を知っているが
 体の自由がきかない程に重い怪我を負った事も覚えている。
 友人もまた探索者と同じように、自分を呼びかける家族、友人の声を聞いていたのかもしれない。
 その時の友人は元通りに戻れない現実を受け入れる事が出来なかったので、自由でいられる夢の世界に留まる事を選ぶ。

 友人NPCは探索者の事が大好き。
 探索者には現実の世界で生きていて欲しいと願っているので、探索者を外に出そうとするが
 自分と一緒にいる事を望まれるとその意思が揺らぐ。探索者の選択が何でも拒まず、自分の意思で受け入れる。

 ステータスはPOW10で固定。
 他のステータスは探索者に合わせる、ダイスに任せる等自由な形で決める。

NPC1・2

パーティードレス姿の女性または男性。
NPC1・2の本来の姿は死後の世界に長く居過ぎて、人としての形を失ったグール(ゾンビ)。
シナリオ進行に従い人の姿からかけ離れていく。

NPC1もNPC2も現世に強い未練がある。
NPC1は自分の境遇をある程度受け入れ、夢の世界で過ごしていく事を選んでいる。
NPC2は受け入れられないまま、ずっと現世に戻ることを望んでいる。
探索者を見守るように接するNPC1に対し、NPC2はまともに意思疎通が出来ない。(SAN0のイメージ)
NPC2は探索者と同性になる。ここでいう性別は、身体的なものになる。(性別不明等判断が難しい場合は雰囲気で)

NPC1・2サンプル

・新島 真琴(あらしま まこと)
 年齢:40代半ば 身長:160~170程
 生前は基礎心理学について教えていた大学教授だった。
 当時既婚者で、中学生の娘がいた。
 5年(以上)前、事故に巻き込まれ帰らぬ人となった。
 家族に、特に妻と娘に一目会いたかったと思っている。

・新島 芽美(あらしま めぐみ)
 年齢:30代後半 身長:兄より小さい
 生前は小児科の医師だった。
 5年(以上)前、兄と同じ事故で帰らぬ人となる。
 芽実はその頃重い病気の患者を診ていた。
 自分の手で治すことが出来なかったのを心残りに思っている。

シナリオ:導入

待ち合わせ

探索者は仲の良い友人NPCに誘われ、昼頃に遊びに出掛ける。
待ち合わせ場所は、二人で出掛ける時にいつも使っている場所。
探索者と友人NPCの関係を確認しつつある程度RPをしたら次の場面へ。

謎の声

聞き耳を振ってもらう。
失敗した場合は特に何も聞こえない。
成功したら誰かが叫ぶような声が微かに聞こえる。続けて正体の分からない視線を感じる。
SANC0/1
遠くから、誰かが叫ぶ声が聞こえた気がした。
声の方に注意して耳を傾けても、それがどこからのものかは分からない。
ふいに視線を感じた。
あなたは咄嗟に周囲を見渡すが、その視線の正体も分からない。
何かが自分を見ている。監視されているように感じる。
声の正体は意識を無くした探索者に呼びかける家族や友人、または看護師。
探索者にとって、正体の分からない声と視線は不気味なものに感じる。
声はPCの聞き耳結果がどちらでも、友人NPCに聞こえている。
周囲を気にしている探索者の様子を見て、
友人が「……どうしたの?」と声をかける。
何でもないと答えると「そう?」と気にかけつつ納得する素振りを見せ、
声と視線の事を話すと、「何も聞こえなかったけど」と知らないふりをする。
友人はここで、探索者を現実に戻すために行動をする決心をする。

友人の誘い

その後友人が、気分を切り替えるように(またはあっと思い出した様子で)
「明日の昼、時間ある?」と聞いてから、探索者にチケットを見せる。
「友達にチケットを譲ってもらったんだけど、一緒にどうかな」
何のチケットにするかは自由に決める。(映画、遊園地、美術館等)
探索者は明日も会えるという事にして、約束を取り付ける。

待ち合わせ場所と時間が今日と同じである事を伝えてから帰宅する。
帰宅後、PLがやりたい事を終えたら次の日へ。

☆出来たら聞き耳結果~解散までの間に友人から伝えておきたい事

・自分がもうすぐ遠くに行って、探索者に会えなくなる事
・会えなくなる前に、思い出作りをしたい事
・明日の午前は用事がある事

☆友人が渡したチケットについて

次の日になると何故か全く別物のチケットになっている。
・探索者は幻を見ていた
・魔法のチケットだった
・探索者が気付かない間に友人がすり替えた
等自由に設定を考えてください

悪夢

その夜、あなたは夢を見た。
あなたは待ち合わせ場所に向かっている。
道路を隔てた側の歩道で、待ち合わせ場所に向かっている友人の姿を見つけた。
あなたは声を掛けるが、向こうはこちらに気づいてないようだ。
もう一度声をかけて友人の元に行こうとしたその時、
遠くでブツンと、何かが切れるような、嫌な音がした。
その音が友人がいた場所……
建設の作業現場から聞こえてきたという事に気付いたのと、
上を向いた[彼or彼女]の頭上に鉄骨が降って来たのは同時だった。
耳を裂くような金属音が響く。
それを見たあなたがその時どうしたのか。
叫んだのか、[彼or彼女]の元へ駆け寄ったのか。
自分では全く認識することが出来なかった。
……
耳障りな目覚ましの音が、あなたの意識を無理矢理浮上させる。
あれは夢だった。なのに嫌にリアルだったあの音が、まだ耳から離れない。
探索者は友人が大怪我する夢を見て目覚める。SANC0/1
探索者が現実で、友人が事故に遭った所を目撃していたかどうかは分からない。(KPが決めて良いし、曖昧にしても良い)

今日は天気が良くないようで、外から雨の音が聞こえる。
(ドアの向こうからはテレビの音と、談笑している家族の声が聞こえる。)
あなたは朝食を取って、待ち合わせの時間まで家で過ごす事になる。
約束の時間まで自由行動ができる。
探索者が実家暮らし等で同居人がいる場合、それも描写して次のシーンの不自然さを強調させる。
チケットを確認するor早めに待ち合わせ場所に行くとPLが宣言した場合、次の場面へ。

天気予報を見るなら、雨は今日一日振るらしい事が分かる。
この時点では友人NPCとは普通に連絡が取れる。
もし探索者側から「早めに会おう」「迎えに行く」といった申し出があった場合、
「今は用事がある」「家族と一緒にいるから平気」等理由をつけて断る。

PLがやりたい事を終え次第次の場面へ。

異変

持ち物を確認するついでに何気なくチケットを手にした時、あなたは違和感を覚える。
チケットは昨日友人から受け取ったそれとは全く違う。
見覚えのない文字が書かれていた。
「夢の終わりであなたを待つ」○月△日(月)
開場 19:30コンフィーネホテル 1Fホール
あなたがチケットを確認した瞬間、
バチン
と、大きな物音がしたのと同時に、部屋の電気が消える。
チケットを手にした瞬間、異変が起きる。
☆チケットの日付に合わせて『図書館の新聞記事』の日付を変える。

家の中

昼間なので明かり無しでも歩き回れる。
電気のスイッチを押しても、ブレーカーを確認しても、部屋は明るくならない。
電子機器が使えなくなった事以外、様子は変わってないように見えるが、
(一人暮らしではない場合)さっきまで家にいたはずの同居人の姿がない事に気づく。
家族の姿がどこにも見当たらない。
この家にあなただけが取り残されたかのようだ。
携帯の画面は真っ白になっており、どこを押しても反応が無い。テレビも点かなくなっている。
電子機器が使用できないのでインターネットを使った調べ事は出来ない。
コンフィーネホテルという名前に聞き覚えは無い。
アイデア・聞き耳・目星のどれかを振ることが出来る。

アイデア(聞き耳)成功で、静かすぎる事に気づく。
嫌に静かだ。家の中からも、外からも、物音1つ聞こえない。
目星成功で、外に人一人いなくなっている事に気づく。
窓の外の景色が目に入る。
あなたがよく知る、いつも通りの風景だ。いつの間にか雨はあがっている。
外には人一人居なかった。嫌に静かだ。とあなたは思った。

外に出る

あなたは外に出た。
(あなたがよく知る、いつも通りの風景だ。いつの間にか雨はあがっている。
ただ、静かすぎる。外には人一人居なかった。)
いつもなら賑やかなはずのこの通りは、死んだように静まり返っていた。
人の声も、足音も、車が走る音も小鳥の鳴き声も、風の音すらも聞こえない。
もう暖かい季節だというのに恐ろしいほどに澄んだ空気は、あなたの身体の芯まで冷やして行くかのようだった。
外に出ると、うすら寒さを覚えるくらいに、辺りは静まり返っていた。SANC0/1
外に出てから探索開始。
友人の家・待ち合わせ場所→図書館→ホテルの順に探索する。
探索者と友人の設定やそれまでのRPに合わせて他の施設等に変更したり、新しく探索場所を生やしても良い。

同行NPCについて

同行NPC

外に出た後、
・探索者またはPLがどうしようか困っている時
・人を探すと宣言した時
・一か所探索した後
等適当なタイミングで同行NPCを登場させる。
少し離れたところに人のシルエットがあるのを見つける。
あなたが近づくと、この場所には不似合いな、
ドレス姿の女性(orスーツ姿の男性)がそこに立っていた。
NPC1は探索者に対して友好的に接する。
このチケットは何だろう、友人を探している、今一体どうなっているんだ、という話になれば
夜になるまで友人探しを手伝う、ホテルに行けば分かる、ホテルまで同行する、 等提案して探索者に同行する。
頼まれなくても勝手についていく。 NPCのRPで探索場所まで誘導させる。
例:「お友達とはどこで会う予定でしたか?」「家にはいないでしょうか?」「夜になるまで、図書館に寄っても良いでしょうか」

会話内容

今いる世界の事は話さない。自分の事も図書館に着く頃までは詳しく話そうとしない。
探索者の質問に対する回答は全体的に曖昧。
分からない事があるならホテルに行けば良いという事くらいしか教えない。
探索者がこうなのかな?と聞いてきたら「そうかもしれない」「あなたが言うならきっとそうですね」といった調子で返す。
探索者の意識が現実に近づくと曖昧な回答はしなくなる。

~過去回の会話~
ここはどこ?
→「見た通りの場所です。何も無いでしょう」

コンフィーネホテルについて話す
→「コンフィーネホテルのパーティーですね。私も参加します」

パーティーの内容について
→「ある人をお祝いするパーティーです」
探索者がチケットを持っているのを知っているなら
「折角参加出来るのだから、自分の目で確認してみてはどうでしょうか」と提案する。

友人の家

友人の家に行く

部屋に明かりはついていない。鍵が掛かっていないので、家に入ることが出来る。
友人の姿も、同居人の姿も、どこにも見当たらない。
友人の部屋は片付いている。(あなたが知る[彼/彼女]の部屋と変わりない。)
机にはノートと、動かないデジタル時計が置かれている。
片付けが苦手な友人だと部屋が散らかっているかもしれない。
部屋の描写や、探索に必要な技能は自由に考える。

デジタル時計

昼頃で止まっている。

ノート

友人が書いた日記を読める。
ノートの中身は友人が書いた日記のようだ。
あまりまめな性格で無いようで、1つ1つの日付は間が空きがち。
「◯◯と出かけに行った」「◯◯と食事に行った」みたいな何でもない、
でも印象に残っただろう出来事が、[彼/彼女]の視点で書かれている。
読み進めて行く内に、あなたの記憶が鮮やかに蘇る。
確かに昔、こんな事があった。
あなたが覚えてる限りの、友人との思い出が全部、この日記に綴られていた。
……日付のほとんど全部に、あなたの名前が入っていた。

また今日から一ヶ月前の日付で
もうすぐ地元を離れ、遠くに行くことへの期待や不安が書かれている。
(友人NPCの口調で書く)
友人が先日に、探索者に向けて書いた思い出日記。
急いで書いただろうから、もしかしたら走り書きのような筆跡に見えるかもしれない。

目星に成功すると、チケットや財布といった、友人の私物がどこにも無い事が分かる。
(家に帰って来ていない事が分かる)

友人の家を出た後

友人の家(または待ち合わせ場所)の探索後に描写。
薄桃色の空が広がっている。
よく見知った景色なのに、あなたは違和感を感じる。
道路の標識、電灯、電柱が無くなっている。
自分の知る街の姿が、少し変わっている。

待ち合わせ場所

あなたと友人がいつも使っている待ち合わせ場所の近くまで来た。
道路を隔てた歩道で、友人の後姿を見つけた。
ブツンと、聞き覚えのある音が聞こえた。
友人の頭上に鉄骨が降る。
[彼/彼女は]こちらを振り返ることもなく、潰されてしまった……はずだった。
あの金属音は聞こえなかった。
あなたが気付いた時には、鉄骨も、[彼/彼女]の姿も、消えてなくなっていた。
探索者が見た幻覚。同行NPCには見えていない。
目星 成功でメモを見つける。友人がいた場所まで行くと宣言したらダイスロール無しで出す。
「これはあなたが見た夢に過ぎないが、現実だ」
と手書き文字で書かれている。
手書き文字に対してアイデアを振ることが出来る。
成功でその筆跡が友人のものに似ていると感じる。
先に友人の家で日記を見ていた場合はアイデア無しでも良いと思います。

図書館

図書館に行く前

NPCの姿を見たとき、探索者は違和感を覚える。
[NPC1]の手に目が行く。
最初に会ったときは傷一つ付いてなかったはずの[彼/彼女]の手が
土色に変わり、爛れているように見える。
SANC0/1d3
NPCは自分の異変に気が付いていない。
探索者が指摘すると「そうですか?」と初めて気付いたような態度を取る。痛みは感じていない様子。

図書館

図書館はあなたがよく知る場所では無くなっていた。
あなたが想像していたよりずっと広い空間に、多くの本棚が並んでいる。
人の姿はすぐ側にいる[NPC1]以外、見当たらない。
本棚には分厚い本が隙間なく並んでいる。
本来、タイトルが書かれているはずの背表紙には、
何故か人の名前が書かれている。
他には、ここ数ヶ月分の新聞紙が置かれているスペースがある。
図書館はこの世界にいる人の情報が分かる不思議空間になっている。
図書館というより保管庫、資料室のようなイメージ。普通の本も置いてある。
本棚スペースと新聞紙スペースに目星or図書館が振れる。

本棚スペース

分厚い本には幼少期から現在まで事細かに、[彼/彼女]のことが書かれている。
中にはあなたの知らないような事も書かれていた。
ページの最後の方は、[彼/彼女]自身が書いたかのような文面になっている。

・もうすぐ夢が叶うはずだったのに、台無しになってしまった事
・ここ(夢の世界)なら夢が叶えられる、自分の居場所が夢の世界になっても構わない事
が書いてある。
(友人NPCの口調で書く)
事故の直後の友人の心境が書かれている。

新聞紙スペース

1月前の新聞記事の、ある見出しに目が行く。
『作業事故 [男性/女性]が意識不明の重体』
○○月○○日××時頃、---県---市○丁目の作業場で 通行人の[男性/女性]が鉄骨の下敷きになり病院に搬送された。 現在意識不明の重体である。
この事故の原因は、資材を運搬するクレーンの誤作動によるものだとされ---
友人が事故に遭った時の新聞記事。
住所は夢で見た場所と同じ。探索者にとって見覚えのある住所。
以下スペクリ、またはPLが確認したら出す情報。END4を入れる場合は、『同行NPCの本』を必ず見せる)

同行NPCの本(サンプル)

職業が医師であること、新島真琴(あらしままこと)という名前の兄がいる事、
5年ほど前、兄に乗せてもらった車で移動中、事故に遭ったらしい事が分かる。
『あの子を救いたかった。あの子の家族の笑顔を見たかった。』と、
その頃診ていた患者を、自分の手で治す事が出来なかったのを悔やんでいる事が本の最後に書かれている。
職業が大学教授であること、新島芽実(あらしまめぐみ)という名前の妹がいる事、
5年ほど前、妹を乗せた車を走らせてる時事故に遭ったらしい事が分かる。
『最後に、妻と娘に会いたかった。』と、 家族に別れの言葉を伝えられなかったのを悔やんでいる事が本の最後に書かれている。
同行NPCの詳細と死因、未練が書かれている。

コンフィーネホテルについて

コンフィーネは外国語で「地境・境界線・境目」等を意味する言葉だということが分かる。
それ以上の設定は考えてないです 
現実に戻る通り道として、あちら側の世界に古くからある建物かもしれません。

新聞スペース

先日分の新聞記事が無くなっている事が分かる。
過去の新聞記事を見て、ピンとくる内容(探索者が覚えている出来事)は一つもない。
「そのニュースを知らない」というより、「頭のなかにモヤが掛かったようで、思い出そうとしても思い出せない」
感覚がする。

同行NPCと会話

探索者が調べ物をしている間は、NPC1は読書スペースで自分の職業関係の本を読んでいる。
もし探索者がNPC1の事が書かれた本を読んだことを話しても、不快感を示さない。
(恥ずかしそうに、寂しそうに笑ったりするかもしれない)
本の内容に間違いが無い事も話す。
夕方になると、図書館を出てホテルに向かう。
「そろそろ時間ですね」窓から外を見て、本を戻しに行く。
「行きましょうか?」

図書館を出た後

図書館を出た後で描写。
外の景色は、まるで別世界だった。
塗装されているはずの地面がボロボロに割れており、剥がれたアスファルトから真っ赤な土が見える。
空は、夕焼けと夜が混ざったかのような、曖昧で、不気味な色になっていた。
遠くから建物が崩れる音が聞こえた。その衝撃か、同時に軽い揺れを感じる。
周辺の建物の壁はぼろぼろと崩れ、風化している。
「ぅ……うぅう……」
すぐ側から呻き声が聞こえた。
そこにいたのは[NPC1]……のはずだった。
手の爛れが全身に広がっており、裂けた口からは剥き出しの尖った牙が並んでいる。
[彼/彼女]の姿は人間によく似た、全く異なる怪物に変わり果てていた。
SANC0/1d4+1
SANCの数値はルールブック記載のグールを基準にしています。
(NPC1の体の異変を探索者は既に目にしているので、数値は少し減らしています。
探索者のリアクションや、NPC1との親密具合によってSANCの値を増減して良いと思います)

NPC1は驚いたり、怯えたりする探索者を宥めるように言う。
「こわい、かもしれないけど、だいじょうぶ」
「夢の終わりは、もうすぐそこだから」
探索者との話を終えると、NPC1はゆっくりとホテルに向かって歩き出す。

☆このシーン以降伝えられる事

1.夢から醒める事ができるのは、現実にも体がある人だけ。(生きている人だけ)
2.NPC1は既に死んでいるので元の世界に帰る事が出来ない。
3.NPC1は友人NPCと面識がある

ホテル

NPC2が探索者達を出迎える。
自分がよく知る風景はすっかり、見る影もなくなった。
二人で荒れ果てた街を歩く。
遠くに大きな建物のシルエットと、その建物にぼんやりと灯が点いているのが見えた。
朽ち果てた大きな建物の入り口で、一人の[男性/女性]が佇んでいる。
[男性/女性]、なのだろうか。
ボロボロな[スーツ/ドレス]を纏ってる姿からそう見えるだけで、
側にいる[男性/女性]と変わらない怪物の姿をしていた。
「おまち、しておりました」
あなたを見ると[男性/女性]らしき者はぎこちない礼をし、
木製のドアをゆっくりと開けて中に入った。
建物の中は薄暗かった。
[男性/女性]が灯した蝋燭の光が周辺をぼんやりと照らしている。
近くで演奏会をしているのだろうか、
篭った音色の音楽が廊下の向こうから聞こえる。
「準備は、よろしいでしょうか」[男性/女性]があなたに話しかける。
探索者がはいと答えるとNPC2は扉を開ける。
あなたの返事を聞いてから、ゆっくりと扉が開かれる。
扉の向こうから、光が、音が漏れ出た。

ホールには大勢の人……のような物がいた。

先程まで側にいた彼らのような、『化け物』と形容したくなるものが、
この豪華絢爛な装飾が施された部屋中にいた。
ボロボロの身体と服を引きずって、
嗤ってるのか呻いてるのか分からない声をあげていた。
それはただの悪夢だと済ませるには、あまりに生々しい光景だった。
SANC1/1d4
部屋にいる化け物達の中には時折あなたの方を見る者がいるが、
特に近寄って来る訳でなく、部屋をうろついている。
中にいる人が危害を加える事は無い。
SANCの後、NPC2が探索者に話しかけてから、その場を離れる。
「あなたはご存知、でしょうか……ここは最も、現実に、ちかい、場所」
「コンフィーネ、これはあなたの知る言葉で、境界線を、意味します」
「今日は現世への扉が開く日。この夢から目醒める人がいる、素晴らしい日です。
皆、あなたに興味を持って、ここまで来られた」
「……時が、くるまで、ごゆっくりと、お楽しみください」

探索

目星成功で、友人の鞄を見つける。
バーカウンターのようなボロい机に、見覚えのある鞄が置いてあるのを見つける。友人の鞄だ。
鞄の中に折りたためられた新聞記事と、見覚えのあるチケットが入ってるのを見つけた。
小さな見出しに書かれたある記事に目が行く。
車に衝突 [男性/女性]が意識不明の重体
○○日××時頃、---県---市○丁目の道路脇で[男性/女性]が倒れているのが発見された。
通行人の通報により病院に搬送された。頭を強く打ち、現在意識不明の重体である。
轢き逃げとされ現在調査を進めており---
☆探索者が事故に遭った時の新聞記事。友人が図書館から持っていった。
日付はチケットを渡された日の一日前。

NPC2との会話

NPC2が探索者に話しかけてくる。
(END4を入れないならこの会話は無くても構わない)
「どうですか、お楽しみいただけてますか」
「……あなたは、ご友人に会ったあとは、どうするおつもりですか」
「そのつもりなら、あなたに、頼みたい事が」
「ふ、ふふ、たいしたたのみごとでは、ないのですが」
「目覚めるつもりなら、わたしもご一緒して、よろしいでしょうか」
「あなたと、一緒に外に出たら、私も、きっと、……」
探索者が断ったり、警戒する素振りを見せたら「残念です」と言ってその場を離れる。
構わないと言うと、「ありがとうございます」と笑い声のような呻き声をあげる。
NPC2と一緒に外に出たらEND4(ロストエンド)になる。
NPC1に割って入らせてNPC2の企みを阻止しても良い。

友人と再会

ある程度調べたり話したりしたら、NPC1が探索者に友人と会える事を伝える。
NPC1は出口とは反対側の扉を指差す。
指さした先はに友人が立っていた。友人の元に行くと、友人は探索者に話しかける。
「あの、君はどこまで……ううん、向こうで話そう。ついて来てくれるかな?」
そう言って友人は扉の向こうへ行く。
あなたは友人と、長い廊下を歩く。
ぐしゃり、ぐしゃり、と何かを踏む音が耳に入る。
床に敷かれた柔らかいカーペットも、煌びやかな装飾も、建物も、いつの間にか無くなっていた。
昏い空、肉塊で出来た床、鉄の匂い。
あなたは、この生温い嫌な匂いに、懐かしさのようなものを覚えた。
確か、ここにくるまでの事だ。
あの時自分は、事故に遭った友人の御見舞に行こうとしていた。
青信号を渡る途中だった。突然、横から飛び出して来た車にぶつかった。
車にぶつかった衝撃で、跳ね飛ばされて、段差に頭をぶつけて、それから、
…………
廊下の一番奥、大きな扉の前に、友人はいた。
あなたがいるのを確認すると、口を開いた。
「……思い出すことは出来た?それとも混乱してる?」
「君がここに来てくれて、正直、とても嬉しかった」
「ずっと君と一緒にいられるから」
「チケットを渡した時の事は、覚えてる?」
「あの時、君の名前を呼ぶ、君の家族と、友達の声が聞こえた」
「君は夢から覚める事が出来る」
「この扉をくぐって、真っすぐ進んだら、皆の所に帰れる」
そう言うと友達は、扉の横に立つ。
探索者は自分の身に起きた事を思い出す。
友人に外に出ないのかと聞いたら 「私の事を思い出したのなら、分かるだろう」
と、事故に遭って、もう自由に動くことが出来ない体になった事を探索者に話す。


ここから探索者がどうしたいのか確認し、エンディングへ。

エンディング

END1(1人で外に出る)

友人は「どうか元気で」と笑って探索者を見送る。
あなたは扉を開け、先に進んだ。
扉の向こうは闇に覆われていた。
友人の言葉通りに、あなた達は真っ直ぐ、真っ直ぐ歩いた。
遠くにちらりと光る物が見えた。
光はだんだんと大きくなり、視界が白に染まるまで広がった。
その光にあなたは、心地よい暖かさと懐かしさを感じた。
暖かさに身を委ねるように、あなたは目を閉じた。
…………
あなたは目を開けた。
最初に視界に入ってきたのは、白い天井とあなたを心配そうに見る家族の顔だ。
あなたの名前を呼んでいるのが聞こえる。
とても長い夢を見ていた。まだ朦朧とする意識の中であなたは思った。
その後あなたは、後遺症を残すこと無く順調に回復し、退院することが出来た。
あれから友人が目をさますことは無かった。
友人の家族もその友達も、皆[彼/彼女]の死を悲しんだ。
もしあの時、[彼/彼女]の手を引いていたら、と考える事があるだろう。
どうなっていたかなんて分からない。ただ夢の中の[彼/彼女]は笑っていた。
あなたを笑って見送っていた。
[彼/彼女]は今でも、くらい、儚い夢の中で、夢を追い続けているのだろう。

●END2(友人と外に出る)

あなた達は扉を開け、先に進んだ。
扉の向こうは闇に覆われていた。
友人の言葉通りに、あなた達は真っ直ぐ、真っ直ぐ歩いた。
遠くにちらりと光る物が見えた。
光はだんだんと大きくなり、視界が白に染まるまで広がった。
その光にあなたは、心地よい暖かさと懐かしさを感じた。
暖かさに身を委ねるように、あなたは目を閉じた。
…………
あなたは目を開けた。
最初に視界に入ってきたのは、白い天井とあなたを心配そうに見る家族の顔だ。
あなたの名前を呼んでいるのが聞こえる。
とても長い夢を見ていた。まだ朦朧とする意識の中であなたは思った。
退院後、あなたは友人のお見舞いに行った。 あなたがここに来ることが分かっていたかのように、
固く閉ざされていたはずの[彼/彼女]の瞼がゆっくりと開かれる。
あなたを見た[彼/彼女]の瞳が微かに揺れた。
何度も瞬きし、口をぱくぱくと動かした。必死に何かを伝えようとしていた。
『ありがとう』
[彼/彼女]の声は掠れて、ほとんど聞き取ることは出来なかった。
でも、そう言っているように聞こえた。
[彼/彼女]はあなたを見て、静かに、涙を流していた。
そして、あなたに笑いかけた。

●END3(外に出ない)

「そっか、分かった」
友人はそれだけ言って、あなたの顔を見て微笑んだ。
いつの間にか、グロテスクな光景は消えてなくなっていた。
目前にあるのはホテルの長い廊下だ。
「あ、もうこんな時間!早くしないと終電間に合わないよ!」

友人とともに温かい色の光が照らされた廊下を走り、ホールを通り、出口のドアを開ける。
外はすっかり夜だが、賑やかだ。飲み会帰りだろう会社員や若者が騒いでいる姿が目に入る。
『今まで悪い夢を見ていたのかもしれない』
星空を眺めながら、あなたはそう思っただろう。
あの夢の中の出来事は「とんでもない夢を見た」という二人の笑い話の種となり、
いつか風化していくだろう。
今日も、明日も、明後日も、ずっと。
あなたと友人は笑い合ってすごしている。
貴方が見るくらい、昧い夢の中で。
探索者ロスト。

●END4(NPC2と外に出る)

NPC2との会話で「一緒に出て良い」と答え、 探索者が外に出る事を決めた時点で、NPC2が姿を見せる。
「行きましょうか」と言った後、探索者と友人の返事を待たず、先に扉をくぐる。
あなたは[男性/女性]の後を追うように、先に進んだ。
扉の向こうは闇に覆われていた。
友人の言葉通りに、あなた達は真っ直ぐ、真っ直ぐ歩いた。
遠くにちらりと光る物が見えた。
光はだんだんと大きくなり、視界が白に染まるまで広がった。
その光にあなたは、心地よい暖かさと懐かしさを感じた。
暖かさに身を委ねるように、あなたは目を閉じた。
…………
あなたは目を開けた。
まず視界に入ってきたのは、友人の両親の顔だ。
嬉しそうな、泣きそうな顔でこちらを見ている。そして母親の方が縋るようにあなたの友人の名前を呼んだ。
「[友人]……![友人]!お母さんよ!分かる!?」
あなたは声を出そうとするが、
喉が震えるだけでその言葉は口から出て来ない。
自身の姿を確認しようにも、体に力が全く入らない。
自分の身に何が起きているのか全く理解出来ないまま、時間だけが過ぎていく。

「[友人]![探索者]がお見舞いに来てくれたわよ!」
あなたは目を疑っただろう。
心配そうにあなたの顔を覗き込んでいる[男性/女性]は確かに、
あなた自身だった。

新島兄妹のセリフ

彼は、友人の母が席を外したのを見計らって、口を開いた。
「[探索者]さん。君のお陰で、人生をやり直すことが出来た」
「これからは、この体で、僕の家族を見守ることにする」
「すぐ側に居てやれないのは残念だけど、まあいい。時間はある」
「どうもありがとう。さようなら」
探索者の傍に来てから、すぐに口を開く。
「[友人]、ありがとう」
「私、あなたのお陰で、人生をやり直すことが出来た」
「これからはお医者さんを目指すの。」
「私がお医者さんになって、[友人]の怪我を治すの」
「待っててね」「また会いに行くからね、[友人]。」
病室を出て行く足音を聞きながらあなたはこう考えたのかもしれない。
悪い夢でも見ているようだと。
終わりの見えない、暗い夢から目覚めることは、二度と無いのだと。
探索者ロスト。

EDおまけ

NPC1と一緒に過ごす中で多く会話をする等、親密な関係になっていたら
探索者生存EDで自分の宝物を探索者に託そうとする。
探索者が外に出る事を決めた時点で、NPC1が姿を見せる。
[彼/彼女]は懐から懐中時計を取り出し、あなたに差し出してくる。
「あなたには、良くしてもらった、から、そのお礼」
「もう、自分には、必要の無い物だから」
「あなたに、持って行って、ほしい」
ぐちゃぐちゃな手から差し出された懐中時計には、不思議と汚れ1つ付いてなかった。
エンディングに追加の描写。
探索者が退院する前に、家族、または看護師から懐中時計を渡される。
ある時母親が、「友達の忘れ物かしら」とあなたに懐中時計を手渡した。
あの夢の中の出来事が、現実であったのだと、それを見たあなたは確信することが出来た。

補足

懐中時計について

作者が回した時は持ってても特に何も起こらないお土産になったんですが、
POWや幸運等のステータスが増えるアーティファクト的な物にしても良いと思いました。(しようとしてました)
シナリオ中のどこかに懐中時計に関するエピソードを入れても良いかもしれません。

ED分岐について

正解、不正解が無いシナリオなので
探索者がどんな答えを出しても、後味悪くなる事が無いようにエンディングを描写してほしいです。
ただEND4は毛色が大分違うので、採用する場合は
・NPC1と2が死人であることが分かる情報(図書館の『同行NPCの本』
・●図書館の最後にある『このシーン以降伝えられる事』の1,2項目
以上をPLにしっかり伝えてください。

シナリオタイトルについて

儚い夢:不確かな夢
暗い夢:真っ暗な夢
昧い夢:はっきりしない夢、明るい夢
等 
ED描写で漢字をあてていますが自由に解釈してください